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個別記事の管理2018-07-15 (Sun)

出久君おたおめ~(○ ´ ▽ ` ○)ノシ
昨日のアニアカで新コスチュームになったから新コスチューム描いた。ヒーロースーツ楽しい。
アニメでもシュートスタイル来たからとてもハイテンション。勝デクはまってから原作揃えたい気持ち芽生えたものの巻数多いから二の足踏んでたんですけど、出久君がシュートスタイル(蹴り技)になると知って問答無用ですぐ買いに走った。ライダー見て育ったわしはいてもたってもいられなかった。

出久君のお誕生日にじゃんぷショップでお買い物出来て満足♪
365日ステッカーはレジ並んでいる間に配布終わってしまったけれど、フェア中で缶バッジプレゼントしてたから出久君もろてきた!


それから緑色のケーキ探しにうろうろしにいき、抹茶ケーキになりました。
おいしかった!(`・ω・´)


おたおめ小話も書いたので追記にて。
女子に囲まれてハーレムだけれど最終的に勝デク。







「ねえねえ!緑谷!誕生日いつ?」

芦戸に尋ねられた出久は自分の席に座ったまま顔をあげた。芦戸の横には葉隠がいて、彼女の胸元に本が浮いている。彼女の透明な手に持たれているのは誕生日占いの本だ。さっきまで尾白のところにいたので、近くの男子に誕生日を聞き回っているらしい。

「七月十五日だよ」
「え~っと、しちがつじゅーごにちはー……って、今日じゃん!緑谷!おめでとう!」
「ほんとだ!緑谷くん、おめでとう!」
「そっか。十五日だっけ、今日。ありがとう」

夏休みに入る前に誕生日が来る出久だったが、クラスメイトに祝われるのは小学生までで中学生の時は一切なかった。

毎年、母親が夕食時に祝ってくれるだけで出久には充分だったため、日にちを気にしていなかったのだ。
幼稚園児の時は幼馴染も祝ってくれたが、遠い昔の話だ。

「デクくん誕生日なんだね!おめでとう!」
「緑谷ちゃん、おめでとう」
「緑谷さん、おめでとう御座います」
「おめでとう、緑谷」

麗日、蛙吹、八百万、耳郎まで祝ってくれて出久は愕く。後ろの席の峰田から不穏なオーラが流れてきていて、背中が冷たい。

「それで、なんて書いてあるの?それ」

耳郎が葉隠の横から占い本を覗き込み、麗日達も混じってきゃいのきゃいの言い始める。
あ……。占いなんだ。
出久はしゅん……としてしまうが、クラスの女子全員におめでとうと言われたことは今までになかった。顔が熱い。

「えっとねぇ、七月十五日生まれの人の性格は……」

〝寛大〟
〝責任感が強い〟
〝協調性がある〟
〝ものを見る目がある〟
〝自由な発想が出来る〟
〝バランスが取れている〟
〝落ち着きがない〟
〝ちょっと自己中心的〟
〝自信なさげに映る〟
〝割りと心配性〟
〝優柔不断〟
〝自分を勘違いしがち〟

「結構当たってない!?」

葉隠が読み上げた特徴に芦戸がオオッと目を輝かせる。
視界の片隅に入る尾白が「うん、面白味ないよね。当たりと外れが半々って」と常闇に零していた。外れがあると女子的には駄目なのかと出久は震える。手厳しい。

「〝自制心があり、目的がはっきりしているので、現実的に行動出来る人です。〟……これは違くない?体育祭の時とか緑谷捨て身だったし」
「あ。でも、ここ読んでみなよ。〝本来は現実的で保守的ですが、時折型を破った行動をしたり、言動が矛盾している時があります。〟……だって」
「あー!分かる!」

出久は顔を両手で覆った。すごく居た堪れない気持ちになっている。
女子に囲まれている此方に近付けない飯田と轟がうんうんと教室の後ろで頷いていた。

「ね!ね!恋愛運も見てみようよ!緑谷のかなり当たってるし、期待出来る!」
「れ、恋愛運!?」
「おやおや、お茶子さんも乙女ですな~」
「ちょっ!そんなんじゃなくって!」
「まあまあ、落ち着きなって。今は緑谷の番だから麗日は後でね」

手をブンブン振っていた麗日は一瞬にして落ち着いた。その様子を蛙吹がケロケロと見つめる。

「ウチは恋愛運どっちでもいいけど、みんな興味あるんだね」
「私はどちらかと言うと、相性の方が気になりますわ」
「相性が良い誕生日と悪い誕生日も載ってるから、これも後で確かめようよ」

耳郎と八百万の会話を聞き取った芦戸が提案する。

「でね、緑谷の恋愛運だけど」

恋愛運は興味があるかないかと言われれば……と、出久は前の席に座る勝己の背中を見つめる。

「〝四十歳までは順調〟だってさ!良かったじゃん!〝ピークは十歳〟までだけど」
「終わってるね!」
「残念でした。あと、〝四十過ぎたら六十まで良い出会いがない〟から」

あははと笑う芦戸の横で、運勢グラフを見ていた葉隠が出久にも見せる。

「あ、でも、〝恋愛運下がると金運上がってる〟よ」
「それは……僕、喜んで良いのかな?」

出久が苦い困り顔をすると、本を手元に戻した葉隠が書かれている予想を読み始める。

「〝恋愛は時期を逃すと周囲から反対を受ける相手と結ばれてしまいます。場合によっては何もかも捨てて恋愛に走ってしまうことも。あなたの恋愛が周囲に及ぼす影響は大きいので、自分を冷静に見つめる時間も必要でしょう。〟……周囲に影響を及ぼすほど緑谷くん大物になっちゃうのか!ちょっと楽しみ」

大物は大袈裟じゃないかなと出久は苦笑する裏で反対を受ける相手という言葉が引っ掛かった。

「〝かなりの純情派で、強く迫られると好きでもない相手と付き合ってしまうことになるので要注意〟だって。気を付けなよ、緑谷」
「う、うん」

葉隠の本を覗き込みながら芦戸が警告してくれたので、出久は深く考えずに頷いた。
突然ガタッ!と音がして、出久は肩を跳ねさせる。
いきなり席を乱暴に立ち上がった勝己へ視線が集中した。

「爆豪は誕生日いつ?」

動じずに誕生日を尋ねる芦戸の度胸に出久は感心してしまう。

「あア!?」
「緑谷、爆豪の誕生日は?」
「四月二十日」
「クソデク!」
「わっ、ごめん、かっちゃん。条件反射で」

条件反射ってどういうことだろう?とクラス内が騒めく中、葉隠が本のページを捲る。

「四月二十日、四月二十日。あった!爆豪はね……」

〝協調性が高い〟
〝空気を読む〟
〝親切〟
〝機転が利く〟
〝寛容〟
〝思慮深い〟
〝愛想が良い〟
〝平和主義〟
〝割りと疑い深い〟
〝自信なさげ〟
〝臆病〟
〝神経過敏〟
〝感情主義〟
〝一貫性がない〟

「なんか……違う。殆ど正反対じゃない?他には何て書いてある?」
「ええっとね~、〝優しい気遣いの出来る人で、善意に溢れ、人からありがとうと言われるのが幸せ〟」
「そうなの?爆豪」
「うぜェからやめろ!」

青筋いっぱいの勝己に皆が引く。
どのあたりが善意に溢れているのか甚だ疑問である。

「あ!ちょっと待って!ここは当たってるから!〝もともと人を惹きつける魅力のあるあなたは周囲から憧れの人として見られています。〟」

出久はドキリとして、女子達を睨みつける勝己の横顔を見てしまう。
葉隠は出久の様子に気付かないまま、続けて音読する。彼女が思う当たっているはここから先だ。

「〝本来のあなたは確固たる信念を持っている人。本当に欲しいもののためならテコでも譲らない頑固さを持っています。また、権威欲が強い。〟」
「確かに、そこは当たってるかも!」
「これも爆豪っぽいよ。〝物怖じしないタフなメンタル。能力が高い人ほどワンマンな傾向があります。〟ほらね!」
「それ当たってる!他には他には?」
「他はもう恋愛運しか項目ないなぁ。〝思いやり深い心と、人を押し退けてでものし上がろうとする強い信念は、どちらも勝ち組人生を送るために必要なものです。特に異性は、あなたの優しさと強さのギャップに魅了され、のめり込んでくる人が多いでしょう。ドラマティックな恋をするチャンスが多く、ややトラブルの多い恋愛になりやすい特徴があります〟」
「ドラマティックは憧れるけど、苦労するね、爆豪。優しさとか思いやりの心捨ててるけどさ」
「だからさっきからうっせェぞ!そんなちゃっちいもんで分析した気になんなよ!」
「アタシ達だって信じてないよ」
「だよね。占いはただのスパイスだよ」

じゃあ、占いで一喜一憂している女子は一体何なんだと、男子一同の心の中がモヤモヤする。

「けど、ここ。爆豪ちゃんというより、緑谷ちゃんよね」
「梅雨ちゃん、どこ?」
「ここよ。お茶子ちゃん」

蛙吹が長い舌で指した文面を麗日が読み上げる。

「〝自分は損をしても、人を助ける。〟あ、本当だ。デクくんみたいなこと書いてある」

出久みたい。そんな声に勝己の表情がみるみる歪んでいく。
やばいと出久が思った直後、チャイムが鳴った。

ミッドナイトが教室の扉を勢いよく開けて席に着くよう言えば、勝己は舌打ち一つで席に着く。出久の周りに集まっていた女子達も自分達の席に戻る。
それを見ていたミッドナイトは教卓に立って、出久を鞭の先で指す。

「緑谷くん!今日はモテモテね!先生、たくさん当てちゃうから」
「は、はい!頑張ります!」
「先生~、緑谷くん今日誕生日だよ~」
「あら、そうなの?じゃあ、先生からのプレゼントよ!」

ミッドナイトは自分の好みで勝己を当てることが多いが今日は出久に集中した。

「デクくん、誕生日なのに災難だったね」
「うん。でも、予習しといたとこで良かったよ」
「緑谷くん、まだちゃんと祝いの言葉を言えていなかったから言わせてくれ。お誕生日おめでとう!」
「おめでとう、緑谷」
「ありがとう、飯田くん、轟くん」

ミッドナイトの授業が終わり、放課になって麗日達が出久の席を囲む。

「あれ?意外!」

出久の列の一番前の席から声があがる。葉隠の声に出久達は顔を向ける。すれば、葉隠も席から後ろを向いて本を拡げて見せてくる。勝己が挟まれていた。

「爆豪と緑谷くんの誕生日相性の悪いところにない!」

良いところにもないけど。

「あ。そうなんだ」

出久は葉隠ほど意外には感じていなかった。仲が悪いのと相性が悪いのは別物だと思うからだ。

「そうかよ」

勝己も葉隠に返事をした。その言葉の意味は出久と大差ない。勝己も自分と同じように感じていたことに出久はそわそわしてしまう。
放課の間にトイレに行ってくると、席を立った出久を麗日達が見送る。

「葉隠くん、その本を少し見せてもらってもいいかい?」
「良いよ。飯田も占い興味あるの?」

葉隠から占いの本を受け取り、飯田は首を横に振る。

「申し訳ないが、違うんだ。視野を広げるには読まないジャンルの本にも挑戦すべきだと思ってな。苦手なものは克服していきたい」
「真面目だね~、委員長」

ふむふむ、なーるなーる。と頷きながら飯田は占いの本のさわりを読む。

「緑谷くんのページはここだったか?」
「うん。デクくんのはそこだよ」

七月十五日生まれの特徴が記載されているページに目を通す飯田が次第に眉を顰めていく。

「ど、どうしたん?飯田くん」
「顔色悪ぃぞ」
「あ、いや……すまない。ここに、〝若いうちから他人のために行動することを苦にしないところがあるため、心や体に不調をきたす可能性も高い。〟と書いてあったので、つい……」

出久の将来を案じてしまったのだと、飯田はズレてもいない眼鏡をかけ直す。
途端。バッと飯田の手元から本が消えた。何故だ!?と愕く飯田が辺りを見回せば、勝己の手の中にあった。

「いきなり吃驚したじゃないか!借りるなら一言言いたまえ」
「てめェの本じゃねーだろ」
「爆豪、私に本見せろって言ったよ。良いよってまだ返事してないけど」

葉隠には一言断っているとして、飯田は納得しきれていないものの黙り込むしかない。

「〝自分の人生を生きるようにしましょう〟……ハッ、くっだらねェ」

〝確かにあなたには義務や責任もつきまといますが、全てを一人で実行する必要はありません。子供の頃のように家族や友人や仲間に助けを求めれば良いのです。できないことは恥ずかしいことでも怠慢なことでもありません。〟
そこまで目で読みあげた勝己は唇を尖らせる。アイツが助けを求める日など来るはずがない、と。

勝己は飯田の手に本を叩きつけ、席を立った。
教室を出て、廊下を歩く向かいから出久が歩いてくる。トイレからの帰りだ。

前から勝己が歩いてくる様子に、彼もトイレかなと出久は勝己の邪魔にならないように廊下の端に寄る。
すれ違い様、胸倉を掴まれ引っ張り上げられる。
いきなり!?と出久は青褪める。
殴られでもするのかと思いきや、顔が近づいただけで、すぐ解放された。

男子トイレに消えた勝己の背中が見えなくなっても、出久はそちらから目が離せなかった。
微かにだが、唇が勝己のそれに触れた。重ねたわけではなく、掠った程度。
けれど、出久には充分なほど心臓に悪かった。

「誕生日プレゼントだったら、タチ悪いぞ」

下唇を指で摘む出久の顔は真っ赤だった。


-END-





あとがきのよーなもの
〝〟内は引用文です。
お誕生日と性格と何やらでネット検索したら上の方に出てきたのを五個ぐらい読んだら出久くんかなり出久くんでした。かっちゃんはなんか違うか?と思ったものの、拗らせてなかったらこーなってたんやろか? あとかっちゃんの生まれた日は政治家が多いと書いてあってプロヒーロー引退後に政界デビューまで妄想した。
勝デク付き合ってる設定にしようか付き合ってない設定にしようか迷いながら書いていたのでかなり宙ぶらりんになりました…。
出久君HappyBirthday!!

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* Category : 小話
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個別記事の管理2018-04-20 (Fri)
かっちゃんおたおめーノシ


かっちゃんっぽいオレンジ色のケーキ買ってきてお祝いしました。また家の親はわけもわからず誕生日ケーキを食したべ。
普段、柑橘系のケーキ食べないから新鮮だったよかっちゃん。
ブラッドオレンジものっててめっちゃ鎧武感あるなって思っちゃったけどかっちゃん爆誕祝いよ(・ω・)/

かっちゃんおたおめ祝いにミニSS書きました。
追記にて。あのTシャツ出久くんっぽいセンスだな…て。





(ほんのり勝デク)



三年生が卒業し、高校は何処も新しい春を迎えていた。雄英高校も新入生の一年生、学年が繰り上がった二年生と三年生で新学期が始まっている。

卒業した三年生の寮に新一年生が入寮し、二学生と三年生は前年度から引き続き同じ寮での生活だ。変わったのは教室の場所くらいだなぁ、と出久は二年生用の棟から1年A組の教室を窓越しに眺める。
それから、前に向き直った。帰りのホームルームが終わり、担任の相澤が「さようなら」と挨拶して去っていく。2年A組は担任も変わっていなければ、クラスメイトも誰一人欠けることなく変わらず、席順も出席番号順のままだ。

「かっちゃん」

出久は前の席に声を掛けた。寮に帰るために立ち上がっていた勝己は後ろの席に座っている出久を振り返る。

「ンだよ」

睨み付けられて出久は「うわ……」と顔に出したが、机に乗せた大きな黄色のリュックをごそごそ漁る。
取り出した袋の皺を掌で伸ばして、形を整えてから勝己に差し出す。

「おめでとう」

祝う言葉に、出久の声が耳に届いていたクラスメイト達が二人を振り返り見る。

「あぁ」

普通に勝己が出久から差し出されたプレゼントらしきものを受け取るので、皆が固まる。

一年の時の大喧嘩から勝己が露骨に出久に突っかかっる姿は見掛けなくなったが、出久が躓いたり失敗する度に鼻で笑い、小馬鹿にしている態度は相変わらずだった。
教室移動や食堂で一緒に行動することもなく、仲の悪さは健在だ。

「……まともなもんだろうな」
「え、ぁ……一応」

微妙な受け答えをする出久に勝己は片眉を歪ませる。赤い袋のラッピングを剥がして中身を取り出した。
無遠慮な勝己の行動に出久は立ち上がる。

「い、いきなり開けないでよ!」
「俺のもんを俺がどうしようが勝手だろうが!」
「そうだけど、自分の部屋で開けてほしかったんだ!」
「ここで渡したてめェが悪い!」

グッ……と言葉を詰まらせたのは出久であり、口論は勝己の勝利で決着がついた。
勝己は中身を包むビニールを剥がして、それを拡げた。最初に目に飛び込んできたのはKAKIFRYの文字だった。

「クソの一つ覚えか!」

それを言うなら馬鹿の一つ覚えだと口を挟めず、出久は俯く。

出久が勝己に渡したのは黒いTシャツだ。白文字でKAKIFRYと書かれ、真ん中に楕円形の謎のシルエットがある。このシルエットはおそらく牡蠣をイメージしているのだろう。
柿だったら絶対着なかったと勝己は内心で言葉にする。

「あれ?なあ、爆豪。お前似たようなシャツ持ってなかったか?」

切島は勝己が拡げているTシャツを覗き込んで言った。

「似たも何も」

答えるために横を向いた勝己はいらないものまで視界に入れてしまう。切島の後ろのほうで膝を叩いて笑いを必死に堪えている上鳴が見えたのだ。

上鳴だけは切島が既視感を感じている元のTシャツの出所を知っている。
一年の時、出久、切島、麗日、蛙吹のインターン組が寮に帰って来た夜に勝己が着ていたTシャツがそれだ。黒地に白文字のAJIFRY、それに魚っぽいシルエットマーク。
今、勝己が手にしているTシャツと酷似している。絶対に同じ店で買ってきたとしか思えないシリーズ感が漂っていた。

笑いを堪え切れなくなった上鳴が噴き出しながらあの日と同じ言葉を口にする。

「素直になれよ、かっちゃん」

敢えて、かっちゃんと呼んだのには理由がある。
勝己のあの謎Tシャツは出久からの誕生日プレゼントだったからだ。更に新しい一枚が増えたことに上鳴は笑いっぱなしだ。

「み、緑谷っ、マジ、センス無ぇっ、ぶはっ」
「ええ!?もしかして駄目なの!?かっちゃん、あれ着てくれてたから気に入ってくれたんだと思ってたのに……」

上鳴の笑い声に出久はガビーンとショックを受ける。

幼い頃、まだ一緒に遊んだりしていた時の記憶の中で、勝己は黒いTシャツにドクロマークが入っている服を着ていた。出久の記憶が正しければ何か英文字が書かれていた。四歳前後なので何が書かれていたかまでは鮮明ではないが、物騒なことが書かれていた感じがしている。
勝己の趣味に合いそうというよりは、記憶の引き出しから見慣れたイメージがあった。だから似合いそうだと思って選んだプレゼントだ。
けれど、自分のセンスは的外れだったらしく、出久はしょげる。

「気に入ってるわけじゃねェ」

更に勝己から追い討ちをかけられる。
けれど、勝己は出久から貰ったTシャツを自分のスクールバッグに突っ込んだ。

「勿体ねェから着たる」

仏頂面でそれだけ言って、教室を出て行った。
プレゼントを渡してから一度も目を合わせてくれなかったが、そこが勝己らしいなと出久は口をもごもごさせながら自分のリュックを背負った。



一年後の春。
四月二十日にEBIFRYシャツを誕生日プレゼントしたら出久は顔に爆破を喰らった。しかし、その日のうちに勝己はプレゼントを着てくれていた。




- END -

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* Category : 小話
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個別記事の管理2017-09-20 (Wed)

ウルフリ前提おじいちゃんシリーズのオマケSSの二人。
9月以降の通販ご利用に付けているA4一枚両面分の小話から。通販優先で、後々サイト掲載もしくは印刷データをお持ち帰り出来るようにする予定です。
キオ視点の話は同人誌収録のみでそれの続きっぽいもののため単品としては不親切で申し訳ないのですが、ざっくりまとめるとじいちゃんや父さんから聞いた話の中の白い狼に会ってみたかったなと思ったキオがタイムスリップ(もしくは夢)でウルフとばったりする話です。
↓絵の状況説明にオマケSSの冒頭だけ


『Das Vorhandensein』
―― キオとウルフ A.G.115年 ――

ディーヴァの艦内を自室に向かって進んでいたキオはいつもと何か違うような気がして立ち止まる。周りを見渡してみるが、異変は何もない。見慣れた通路である。しかし、自分の知っているディーヴァと何かが違って見えた。
『ドウシタ、ドウシタ』
「ディーヴァ、だよね?……ここ」
足元のハロに尋ねてみたが、質問に対する答えが返ってくることはなかった。
ディーヴァとは異なる連邦の新造戦艦……であるわけがない。キオはディーヴァから外に出ていないのだから。
「戻れば、じいちゃんがいるかも」
自分だけがぽつりと取り残されてしまったかのような不安に襲われたキオは来た道を戻ろうと後ろを振り向いた。
すれば、男の姿があった。
「白い狼……さん」
「そりゃ俺様のことだが。坊主はどっから忍び込んで来たんだ?」
「…………」
キオは途方もなく混乱していた。目の前の男を自分は知っている。祖父の部屋で見た絵のまま、額縁から抜け出た生身の姿に息を呑む。
だって、彼は過去の人物のはずだ。
「なんだ、あまりの色男に言葉が出ないか」
「えっと」
何とも反応に困る言い回しだ。祖父の呆れ顔が蘇る。
「言えんなら言わんでいいが、ハロがいるってことは」
と、ウルフはキオと視線を合わせようと屈む。そこで固まる。つられてキオも固まる。
両頬を大きな手に挟まれ、キオは硬直する。蒼い眼が顔をまじまじと覗き込んでくるのだ。
「似てるな」
フリットに。と、続けられてキオは心臓を跳ねさせた。この目には何もかも見透かされていそうで落ち着かなくなる。


以上。この部分イメージで描きました。ハロが足下じゃないところにいるけれど気にしない(気にしない)。
キオ君にはウルフさんのことを白い狼さんと呼んでもらいたい謎の拘り。フリットはウルフさん(後に呼び捨て)でアセムはウルフ隊長だから、キオに白い狼さん呼びしてもらって三人ばらばらの呼び方させたかった。

オマケSSの全文は来月以降にサイト公開いたします(・ω・)ノ
* Category : 小話
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個別記事の管理2016-01-10 (Sun)
Weiβシリーズ第二部「Weiβ Justiz」
※web拍手第二部終盤連載の都合上、後半を一時的処置でブログに掲載しています。







※Weiβシリーズの設定を練り直しているため、サイトにある同シリーズ作品と辻褄が合わない部分があります


Weiβシリーズ第二部「Weiβ Justiz -11-」




シュンッと、ブレイクルームの出入り口である扉がスライドした音にフリットは丁度飲み干したカップを口から遠ざける。
佇まいを直そうとしたフリットであるが、此方に来た男が有無を言わせず腕を掴んできた。引っ張られ、その勢いで椅子から立ち上がらせられる。

「何の話か判ってるな」
「判って、ます」

妙な緊張感を覚えながらも、フリットはウルフに頷き返した。

「俺の部屋に来い」

続けられたその一言にフリットの全身が硬くなる。
ガチガチに固まっているのが腕を掴む掌から伝わってきたことにウルフは眼を細める。来るのか来ないのか。どうするんだと、フリットの腕を軽く引っ張れば、彼女は面をあげた。



腕を掴まれたまま、フリットはウルフの部屋に連れてこられる。足下を付いて来ていたハロはほんの僅かな差で部屋に入れずに扉が閉じてしまい、通路側に弾かれてしまっていた。うろうろと扉の前で転がっていたハロは目のような二つの点を点滅させると、門番のような出で立ちで扉の横に位置を落ち着けた。

ハロが消えていることに気付いて、あそこでウルフに行くと頷いたことは正しかったのかどうかを考える余裕もなく、フリットは仰向けでベッド上に放られた。
衝撃に目を閉じて、スプリングの軋む音が消えかかる頃に目を開ける。同時に、顔横に指で摘む程度の小さいパックが放られてきた。
それが避妊具のゴムであることをフリットは視認した途端、沸騰しそうな心臓を押さえるように胸に手を置く。

段取りさえなく、いきなりのことにフリットが動けずにいれば、ウルフもベッドに乗り上がってきて真上に覆い被さってきた。心の準備も何も出来ていないフリットは困り眉でウルフを見上げたが、上にいる男は表情一つ変えずに唇を落としてくる。

唇同士を撫で合わせるようにされ、刺激の少なさに一抹の疑問を抱く。けれど、男の唇が下に降りてくるのに緊張が蘇る。
スカーフを解かれ、際どい弱いところを撫でられながらゆっくりと制服を乱される。ベルトはそのままで制服の前を開けられ、インナーも。

覗いた乳白色の下着とその奥の肌色の曲線にウルフは喉を鳴らす。
鎖骨にあたる狼の獣息の熱さにフリットは息が上がりそうになり、歯が立てられたくすぐったさと次の瞬間を待ちわびて声を漏らす。けれど、牙は立てられなかった。
痕が残らないであろう甘噛みだけで済ましたウルフは一度身を引いて、困惑しているフリットの顔を見る。それから、彼女の首と肩の間に顔を埋めて抱きつく。
何かしてくるかとフリットはじっとしていたが、そんな気配は全くなかった。

「あの……ウルフさん……」
「あー、今我慢してるから待ってろ」

何を我慢しているというのか。問い質したかったが、焦っているウルフの声色にフリットは口を閉じた。

浅く長い息を吐き出しきったウルフはフリットの上から退いて、ベッド上に膝を崩して座り込む。その様子を、肘で身体を支えながら起き上がったフリットは目で追う。

「ウルフさ――」
「前を閉じろ」

発言を食われたことよりも、ウルフの言った意味の方が余程理解に苦しんだ。
相手に対して不理解を持っている自分自身が煩わしく、フリットは前を合わせるように浅く胸元を抱く。衣服を整える前にウルフを見つめる。

「……しないんですか?」

目を瞠ったウルフは、フリットの指先が震えていることに気付くと視線を投げた。

「何のために我慢してやったと思ってる」
「判りません」

声まで震え始めたフリットは自分の口元を手の甲で塞ぐ。ウルフに気遣ってほしいわけではない。弱味を見せないように耐えようとする。
ただ、それでも、誤魔化されるのだけは厭だった。自分も、誤魔化したくはない。

「お前が小さいからだ」
「ちい、さい……?」

フリットは自分の胸元に視線を落とした。視線を外していたウルフはそっちも大事だが、今の話はそうじゃないとフリットと目を合わせる。

「そこそこ痛がってただろ」
「そんなこと」
「痛覚に関して鈍くはないんだろうがな、痛いのが好いってのは自傷と変わらん」
「………」
「無自覚だとは言わせねぇぞ」

ウルフの指摘はこの間のことだけでなく、フリットの今までを含めてのものだ。自分自身の犠牲を厭わないのがフリットの正義感であるのはつくづく思い知っている。痛みに対して強いのもそうだ。平気な顔をする。
むしろ、痛みを背負うことで安堵している節も垣間見える。自分が痛むことで自分以外の誰かの傷を肩代わり出来ているとでも思っているのだろう。そんなふうに痛みを甘受していたら、いずれ傷は膿みとなる。けれど同時に、フリットならばそこまで悪化させないと信用もしている。過保護になって心配しているのとは違う。

ただ、安堵に関してはウルフも抱いた後で気付いたことだ。最中になかを傷つけたが、フリットが「ウルフさんからなら構いません」と言うから舞い上がった勢いで続けてしまった。
ウルフは同じ失態を二度しない主義だ。

叱られたように縮まるフリットにウルフは頭を掻く。悪いのはこっちの方なんだがなと、上手く伝えられない。
個人を形成する根幹を覆すのは不可能だ。それこそ生まれ変わるしか方法はないだろう。だから、痛みを背負うことをどうこうしろと言う気はない。此方は傷口を拡げたくないだけだ。

「フリット、お前の身体はまだ大人じゃねーよ。大きくなったら、そんなに痛くもなくなるはずだ」
「また、二十歳になるまではってことですか?」
「節目としてはその辺だろ」

フリットは口を閉じ、眉を詰めた。ウルフの言い分に自分は文句を言える立場ではないからだ。彼が思っているほど痛みを感じていたわけではないにしても。
経験というのはあれが初めてであったし、ウルフとどうだったか言葉では言い表しづらいけれど、激しかったのだと思う。それでも、辛くないか顔を覗き込んで確かめてきたり、頭や顔を撫でて和らぐようにしてくれた。
優しく抱いてくれた男に仇は返したくない。

「待てないか?」
「…………」
「待つって言え、フリット。でないと俺が」

その先をウルフは自分で塞いだ。
不自然に言葉を切ったウルフを、フリットは首を傾げて見つめる。その身動きで衣服が下がり、素肌の肩が覗く。
無防備なフリットを前にウルフは大きく喉を鳴らした。
どうすればフリットにとってためになるか考えている。けれど、味を知ってしまった。

「でないと、何ですか?」
「それは忘れろ」

切って捨てるように遮られ、フリットはシーツを両手で握りしめた。あの時もウルフはすぐにはしてくれなかった。まだ早いと。だから、あの日のことを彼は後悔しているのではないかと不安が強くなる。

「……それって、する気がないってことですよね」

それでも、声だけは努めて平静を装った。

沈黙する。そんな中、ウルフが近寄ってくる気配があった。シーツが擦れる音に迫られ、フリットは肩と背中を強ばらせる。傷を負うのは平気だ。けれど、この、胸の軋みは平気ではなかった。
二の腕のあたりを両方強く掴まれ、フリットは堪えるように目をぎゅっと閉じた。

怯えるように縮まるフリットをウルフは見下ろし、悪態を吐いた。さらにフリットが悲しそうに怯える。

「でないと、俺がお前を喰っちまうだろ」

フリットから怯えが消える。顔を持ち上げようとした彼女と視線が合う前に、ウルフは耳元に唇を寄せた。

「ずっと抱きたくてしょうがないぜ。フリットを滅茶苦茶に可愛がりたいってな」
「ッ……!」

狼の声と吐息に触発されて、フリットの全身が熱くなる。
頬がとてつもなく熱にうなされているが、此方の腕を解放して身を引くウルフに少し冷静さを取り戻す。彼の言ったことが俄には信じられない。

顔の赤さを見られたくないからと視線を投げていたが、その先にウルフが放った封がされたままの避妊具が落ちたままになっていた。手に取り、これを何処から出したかとフリットは少し前の記憶を手繰り寄せる。ベッド下からではない。彼はジャケットの内側に手を入れていた。
ずっと、持ち歩いていた。その事実が指す意味にようやく気付いて、彼の言葉に一切の虚偽がないと信じられた。胸の軋みまでが熱に変わる。

フリットは衣服の乱れを直し、首元にスカーフを通した。ウルフと膝をつき合わせる距離で足を揃えて姿勢を正す。

「判りました。待ちます」

待っててくださいと続けたかったけれど、言葉にはならなかった。ウルフの譲れない何かの正体がまだ知れないからだ。知りたいとは思っていない。きっと、彼が胸に秘めるべきものであろうから。
それが理由かと思っていたが、それも理由だった。
理由が一つだけとは限らない。年月の問題が無くなったところで、理由が無くなるわけではない。

真正面から真っ直ぐに視線を合わせるフリットの面差しは落ち着いたものだ。達観さえ垣間見えていたが、その表情が少しずつ崩される。
此方の胸に抱きついてきたフリットをウルフはしっかりと抱きとめたが、次の言葉に顎を引く。

「すみません、役不足で」

ウルフの好きなようにしてもらいたいけれど、そう出来ない原因が自分にもあるのだとフリットは自分自身を責める。

「そんなことは言わなくていい」

フリットが補えていない部分を自分が補ってやるべきでもあるが、それが可能であったならば、自分はこんなことを彼女に言わせなくて済んでいる。

「足りないのを埋めてやれんが、お前が一人前になれるように俺が教えてやる」

フリットの頭を撫でくる。すれば、不満そうな顔をされたので、子供扱いが厭なのだろうと手を放した。けれど、彼女は不満そうな顔のままだ。

ウルフの肩に手を置いて膝を立たせたフリットは、自分から彼の口端に唇を押しつける。本当は食み合いを求めていたが、上手く出来なかった。
腰を落としてやり逃げしようとしたフリットを腕で掴まえ、ウルフはフリットと額をくっつける。

「なんだよ、こういうのも教えてほしいのか?」
「……」

指摘通りだ。けれど、そういう子だと思われたり、からかわれるのが厭でフリットは唇を内側に閉じる。
フリットの杞憂を掘り下げず、ウルフは鼻を鳴らした。それを皮切りに、狼は表情を逆の意味で豹変させる。

真顔になったウルフを前にフリットは逃げられず、唇を奪われた。自分から閉じていた口を開いてしまえば、すかさず狼の舌がねじ込まれる。

「……ン」

熱っぽく喉を鳴らす。
唇を繋げたまま、押し倒される。くちゅっと湿った音が室内に響き、フリットはむずがる。口端まで濡れているが、自分のものかウルフのものかもう判らない。

奥の方が熱くなってくる感覚にフリットは自分の足をすり合わせた。このままでは、いけないことになるとウルフを押し剥がす。

「もう、いいです」

充分だと主張したが、ウルフは聞く耳を持っていないのか、再び唇を奪ってきた。
さっきのが、なけなしの力だった。もう力が入らず、フリットの両手はそれぞれウルフの手に捕らえられる。指と指を絡ませ合う繋ぎ方で。
フリットが右手に持っていた未開封のそれは、ウルフとの手の間に挟まっている。

口内も舌も蹂躙されているような激しい攻め立てに耐えるなど出来ず、フリットは甘い痺れを感じて手足の指を丸め、浅く腰を浮かす。
此方の手を握り返してきた指の力が抜けるのと同時に、ウルフはフリットの唇を解放した。手はそのままだ。

胸を上下させて、あられもない表情を晒しているフリットから経験不足が滲み出ている。教え甲斐があるとウルフはもう一度貪ろうと唇を近づける。だが、その前に。

「言っただろ、お前を滅茶苦茶にしたいって。キスだけでまたイかせてやる」
「ぁ、あの、本当にもう……これ以上は」
「黙ってろ」

喘ぎごと唇を奪う。食んだら食んだで、フリットのほうからも舌を絡ませてきた。彼女の意思というよりは、身体が言うことを聞かなくなっているのに近いだろう。理性的な奴から本能を引き出していることにウルフは快感を覚える。

気付けば、ぐったりとフリットはベッドに沈んでいた。原因は酸欠かウルフの技巧な舌使いか、理由が曖昧だろうが明白だろうが、少し意識が飛んでいたことは事実だ。
ぼんやりしていると、顔に影が掛かった。ウルフが覗き込んできていると認識して頭が一気に醒めた。口元を拭い、フリットは背を起こす。散々やっておいて気遣うのだ、この男は。

多分立てるはずだと、フリットはベッドから降りようとする。けれど、手首を掴まれてウルフを振り返った。

「まだ終わってないぜ」
「え」

流石に痺れきっている唇を強ばらせたが、ウルフが続けたのは予想に反していた。

「腕枕」
「ぇ、あれ?うでまくら?」
「またしてやるって言ったはずだが」

きょとんとしていたフリットだが、瞬きを二回して思い出した。そんな律儀にあの発言を守ってくれなくても良いのだけれどと首を傾げる。

「ウルフさん、任務があるんじゃないですか?もうすぐ哨戒の時間だったと思うんですけど」
「とっくに過ぎてるぞ、そんな時間」
「でも、それじゃあ……ッ、すみません」

自分がウルフを拘束してしまっていたということになる。時間厳守は軍人の責務だ。フリットも規則は守らなければならないとすり込まれているし性分としてもそうだ。だから、ウルフに責務を破らせてしまったことを申し訳なく思う。

眉を下げて謝っても謝りきれないと肩を落としていくフリットの様子を前に、生真面目だなと感想する。ウルフは掴んだ彼女の手首を引っ張る。

「ラーガンに頼んである、お前が気に病む必要ねぇよ」
「だ、駄目です」

まだラーガンを巻き込んだままであることをさらりと告げられ、フリットは益々肩身が狭くなる。

「だから気にするなって。あいつには後で飲みにでも誘っとく」
「そういう問題じゃ……」

酒のことはいまいち判らず、フリットは言葉尻があやふやになる。

柔らかい頬を両手で挟み、フリットを上向かせたウルフは彼女を良い子にさせようとする。勿論、自分にとって都合の良い意味で。

「俺の腕枕に不満はないんだろ?」
「そういうことばかり覚えておかないでください」

不服そうな顔をしつつも、フリットは仕様がない人だと身体から力を抜いた。

先にベッドに寝そべったウルフの横に手と膝をついたフリットは彼の腕にそっと頭を置く。腕は痛くないだろうか、これで大丈夫だろうかとフリットは不安そうにウルフを見つめた。

「もっとこっちに来い」

腰にウルフの腕がまわり、ぐっと引き寄せられた。鼻先が触れ合いそうなくらいの距離にフリットの鼓動が速まる。

背筋を通って、腰にまわされていたウルフの手が髪を束ねているリボンに触れる。撫でる動きが項に伝わって、フリットはくすぐったそうに眼を細める。
しかし、珍しく気難しい顔になっているウルフに瞬く。もしかしてと、フリットがリボンに視線をやろうとすれば、気付いたウルフが頬をつついてきた。

「まぁ、妬いてるには妬いてるけどな」

このリボンをフリットが手放せない理由には頷けた。此方がGエグゼスのことを話した後、彼女は自分の髪を結うリボンの贈り主のことを語ってくれていた。

リボンには妬かなくなったが、フリットのことを身を挺して守った少女の生き様には妬いている。
けれど、少女がフリットに遺したものを書き換えたくはない。その先に死があるからこそ、生きることそのものは貴く在る。命を軽んじてはならないことを少女との邂逅でフリットは充分に理解したはずだ。自分のような人間では教えてやれないことだ。
だから、リボンのことを、本来の持ち主のことを気にしてフリットを抱かないと主張しているわけではない。理由の一つではないとはっきり断言しておく。

見るからに安堵したフリットにウルフは顔を近づける。

「俺の惚れた女が良い女だってのは変わらないぜ」
「だから、僕はそういう人じゃありません」
「同じことを言わせる気か?」
「………ヒールは履けるようになりました」

自分も人のことは言えないが、ウルフの自信過剰なところは勘弁して欲しい。過剰では少し語弊があるだろうか――言ったことをやってのけてしまう。だから、それくらい自分だって出来ると張り合ってしまい、後戻り出来ない状況に陥る。

「上出来だ」

それに、わりと些細なことでさえこうやって褒める。誰にでも出来そうなことでも、お前にしては頑張ったと。
照れが混じり、反発しづらくなる。
じっとしていられず、身じろぎすれば、ウルフがまた難しい顔をしてリボンに触れてきた。

「ほどいていいか?シワになるぞ」

大切なものだろと含み言われ、フリットはそれで難しい顔をしていたのかと納得した。横になれば寝痕が付くかもしれない。解くべきか解かないべきか迷ってくれていたらしい。

「じゃあ、お願いします」

リボンが解かれ、ウルフの手に丁寧に畳まれる。
さらりと流れたフリットの若草色の後ろ髪に目を奪われ、ウルフは三年の月日を想起させられた。

「お前さ、俺が告る前から俺に惚れてたか?」
「え。さあ?」

考えてもみなかったことだったとフリットの顔に書いてあり、ウルフは若干だが落胆する。けれど、色気のない返答はこいつらしいと腑に落ちる。

感情ほど曖昧なものはない。言葉に出してみたりしないと形にならなかったりする。意外と、本人が預かり知らぬところで最初の一歩が踏み出されているものだ。

意識が足りていないだけだと言い聞かせた。それより、髪が頬や首筋にかかっていると、色気のないことを口にする唇でも妙に艶めいて見える。

「髪下ろしてるとエロいな」
「ウルフさんのために伸ばしてません」

何のために伸ばし始めたか。それはフリット自身判然としないが、面倒な手入れは続けている。自分の髪なのだから自分のためであるが、この髪に一番触ってくる相手はウルフに違いない。前から頭を撫でてきたり嗅いできたりする。
放っておいてくれていいのに、よく構ってくる。

「ウルフさんこそ、僕のどこが良いんですか?」
「さあな」

言い草からして、はぐらかされたのはフリットでも判った。それでも追求しないのは、何となく、ウルフが照れ臭いと表情にしたように見えたからだ。

そろりと、躊躇うように頬に触れてきた小さな手にウルフは表情を改める。

「どうした」
「いつも、ウルフさんに何かしてもらってばかりで。僕から触ったら……駄目ですか?」

手を下げようとしたフリットの手を取り、ウルフは彼女の手を自分の頬に押しつける。

「好きなだけ触れよ」

声色に促され、フリットは恥ずかしそうに頷いた。ウルフの手が離れたところで、彼の頬を撫で、髪を撫でる。見た目よりも柔らかい髪の感触に目を瞠りつつ指先に絡ませたりする。ウルフが吐息を零す仕草にまで心臓が高鳴る。

不意に頬に感じた温もりにフリットはそちらを見遣る。ウルフの手が頬を包んできて、フリットは殆ど無意識に自分から彼の手に頬ずりする。仄かに嬉しそうな顔をされてウルフは感じたことを口にする。

「お前、よく笑うようになったな」
「そうですか?」

不思議そうに首を傾げたフリットは思い返してもみたが、やはり自覚はない。別段、笑わない方というわけでもないはずだと。

その様子にウルフは微笑する。自分の前では生意気な態度の方が目に付いたのだ。今もそうだったりするが、笑顔は格段に増えたと感じている。

「まだ早いか……まあ、いいか」

そんなふうに前置きしたウルフはフリットの頬を撫でていた手をそのまま口元にまで下ろし、指で唇を撫でる。

「フリット」
「はい」

真剣な声音に焦点を引き寄せられ、フリットはウルフを真っ直ぐに見つめ返した。

「愛してる」

狼からの告白にフリットは「ぁ」とか「ぅ」とか声が出ながらも言葉にならない。自分から彼に好きだと告白を返した時と同じかそれ以上に顔が真っ赤に染まる。
どうすれば良いのか判らずにいると、ウルフが顔を寄せてきた。返事を求められていることに気付いたフリットは更に顔が熱くなる。けれど、呼吸の乱れを何とか落ち着ける。

自分から、唇を触れ合わせた。

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個別記事の管理2015-12-26 (Sat)
Weiβシリーズ第二部「Weiβ Justiz」
※web拍手第二部終盤連載の都合上、後半を一時的処置でブログに掲載しています。







※Weiβシリーズの設定を練り直しているため、サイトにある同シリーズ作品と辻褄が合わない部分があります


Weiβシリーズ第二部「Weiβ Justiz -10-」




何だかんだで三週間近くフリットはデインノン基地に滞在中だった。中と言うからには、まだ“トルディア”に戻る目途が立っていない。
基地側に拘束されていることはなく、見計らう時期をフリット自身が決断しきれずにいるのだ。

此処のモビルスーツパイロット達に混じって模擬戦に参加させてもらったりと有意義に過ごしている。ガンダムの模擬戦参入も軍人達に好評で好意的に認可が下りていた。
ビッグリングだとこうはいかない。ガンダムを使用する模擬戦は控えるよう総司令官から直々に厳重されているからだ。ビッグリング内に機体そのもので戦闘力を計る設備はない。模擬戦をするならば宙域に出なければならないのだから、秘匿扱いのガンダムを易々と動かすなということだ。

だが、デインノン基地を始め、コロニー内の連邦基地用模擬戦地は市街への被害が出ないように敷地内に隔離されるように設けられているものだ。“トルディア”の基地にガンダムを搬送して貰えることもあるが、厳重に管理されてしまうため少し動かす程度のテストでさえも幾つかの手続きをしなければならず、かなり窮屈な制限が掛かっている。

ここでは制限が緩いのはガンダムが物珍しいことともう一つ。コロニーの特性上、基地の責任者の羽振りが良く、大概のことは金品で解決してしまうためだ。
理由は少々引っかかるが、これだけ自由にさせてもらえるのは有り難いことだった。

“ノーラ”のアリンストン基地が懐かしいと、フリットは朧気に重ねていた。アリンストン基地でガンダムを動かしたのは、あれが最初で最後になったことを思うと胸が軋む。
ブルーザー司令の姿を脳裏に浮かべ、彼の言葉を強く胸に刻み直すことで感傷を遠くした。

「フリット」
「はい」

向かいの席から立ち上がったウルフの声にフリットは返事をして見上げた。彼は他のモビルスーツ部隊とのミーティングがある旨を此方に伝えると、そのままブレイクルームを後にした。

いつも通り。フリットは内心で言葉にしてカップに注がれている飴色の紅茶に視線を落とす。
茶葉の抽出時間が適切なくらいにいつも通りだ。薄すぎず濃すぎず。

「ミルクが欲しかったな」
「持ってきましょうか?」
「え。ぁ、いえ、お構いなく」

別のテーブルでラーガン達と話し込んでいたミレースは室内に備え付けの給湯器までコーヒーを取りに行こうとしていたところだ。
彼女の気遣いにフリットは慌てて首を振る。ミルクティーが飲みたいわけではなかった。そう受け取られても可笑しくない発言をしてしまったことを訂正する上手い言葉も見つからない。

「それ、もう冷めてるでしょ。ついでだから淹れ直してあげる」
「すみません」
「いいわ。中尉達のところで待っててもらえる?」
「有り難う御座います」

ぎこちない態度であったのを汲み取ってくれたミレースに頭を下げ、フリットは言われた通りにラーガン達の席に移動する。
会話は聞こえていたようで、同じテーブルにつくとラーガンが手を挙げて迎えてくれる。その横にはアダムスの姿もあった。

フリットの後をついて来ていたはずのハロが飛び出し、アダムスの横を陣取る。ビッグリングの通路でぶつかりそうになった時、受け止めてもらったことを覚えているのかもしれない。ハロからのアピールに彼は戸惑い半分で、その硬い丸みをぎこちなく撫で始める。

アダムスはデインノン基地勤務になったわけでも、ラーガン同様にフリットと共に派遣されてきた扱いになっているわけでもなかった。
グアバランの協力を得て、ラーガンがビッグリングから呼び寄せたのだ。
無論、この度のヴェイガン同時多発襲撃の件についての調査を水面下で独自に執行するための捜査員として。

確証はないが、連邦政府も絡んでいる可能性を考慮してフリットが関わることをラーガンは是としなかった。ガンダムは銀の杯条約に違反していると見解を持っている為政家も少なくない。目を付けられる行為は控えるべきだとの判断にフリットも否は唱えなかった。

関わるなと言われてはいるが、多少掻い摘んだ話は聞かせてもらえている。だから疎外は感じていない。
ただ、口出しするなということだ。関わらず、聞き役に徹するのが条件であることを弁えている。
自分なりの考えも内情にはあるため、燻りは多少なりとも潜んでいるのがフリットの本音ではあったが。

「待たせたわね」
「いえ」

ミルクの香る紅茶をミレースから差し出され、フリットは会釈で礼を言う。

ラーガンの向かい側になる奥の席にフリットは坐し、その隣にミレースが席を落ち着ける。コーヒーを戴くミレースを見遣り、フリットは自分の目の前に置かれた同じ形のシンプルなカップに視線を転じた。
ミルクティーにしてくれた手間を思うと感謝したいのだが、フリットとしては複雑なところだった。ミルクを入れると味が丸く優しくなるので嫌いでは無かったけれど、白といえば彼なのだ。

折角、淹れてくれたのだからと、フリットはカップを持ち上げて小さく口を付ける。ちびりと飲んでいると、視線を三つも感じてフリットは顔を上げた。
ラーガンに、ミレースとアダムスまでもが、自分を注視していることにフリットは首を傾げる。

「何か思い詰めてるだろ」
「え?……ぁ、いえ」

フリットはラーガンの指摘に瞬いた後でぎくりとする。もしかして気付かれてしまったのかと、カップをテーブルに戻す。
その様子に今度はミレースから。

「貴女は思慮深いから考えすぎてしまうでしょ?」
「此処だけの話にしておく。言いたいことがあるなら言ってもいい」

アダムスからも重んずる促しが続き、フリットは言っても大丈夫だろうかと心に置く。それから、ラーガン達を見渡す。心配してくれている彼らを前に、思い切って意を決した。

「あれから……ウルフさん、何もしてこなくて。それで、あの……」

どうしたら良いのだろうかと、相談する言葉は出てこなかった。空気が何かおかしいことにフリットが気付いたからだ。

三人とも表情が止まっている。ラーガンが一人、先に我に返ってフリットの話に合わせるべきだとミレースとアダムスに目配せする。
しかし、フリットは自らの過ちに気付いてしまった後だ。

ウルフがこの部屋から出ていった後であったし、この三人は自分達のことを知っているからと先入観があった。一番の欠点はウルフのことばかり考えていた自分だ。
三人が気を揉んでくれていたのは、ヴェイガン襲撃に関わる事柄についてに決まっている。冷静に俯瞰すれば簡単なことだ。自らにとっても最優先すべきもので、常に頭の片隅に置いていたというのに。

「何でもないです。忘れてください」

奥側に座るんじゃなかったと、フリットは逃げ出しにくい位置を恨めしく思う。
完全に俯いているフリットのつむじに視線を落としたラーガンは頭を掻く。

「フリット、あのな、俺達は構わないから。それでウルフがどうしたって?」
「だから何でもないから!」

顔を上げたかと思えば、直ぐにそっぽを向いたフリットは完全に拗ねている。此処まで赤恥の感情を強く表にする様子は皆無に等しく、この中で一番付き合いの長いラーガンでさえ驚きに舌を巻いた。

フリットがたった一人を意識しすぎている状況は非常に珍しい。
ウルフにガンダムを賭けた模擬戦を挑まれた時も似たような様子であったと記憶しているが、決定的に違うことがある。

「何でもないようには見えないわよ」
「………本当に何も」

心配そうな声音のミレースの顔を振り返り、同じように眉を下げたフリットは視線を戻して俯き気味に表情を落とす。
前髪で目元は確認しづらいが、憂いの面差しを見て取ったラーガンは、決定的な違いを確信する。悔しさではなく、不安があるのだ。

フリットが不安を抱くのは、ウルフを意識している根幹に執着が見当たらないからだろう。
執着とは盲目だ。一途であればあるほど、自己中心的に陥りやすい。しかし、目を配ることに長けているフリットは周囲を見失わず、しっかりと見据えている。だからこそ、ウルフの意向を無視することは絶対に有り得ないことだ。
それ故に、何を優先したら良いのか判らなくなっている。

「俺も大丈夫そうには見えないぞ」
「平気ですから」
「ウルフが何もしてこないって言ったように聞こえたけどな」
「………僕とウルフさんの問題だから」

此方から口を出すべきことではないと、ラーガンは今まで見守ることに徹していた。けれど、時と場合によっては厭わないことを今決めた。何よりも、自分の大事な妹分の不安を取り除いてあげたかったからだ。

「ああ、二人の問題だ。でもな、抱え込み続ける必要はないと思う。俺達以上にウルフには言い出しにくいことなんだろ?」
「それは、そうだけど」

佇まいを直し始めたフリットは、膝に置いた両手に視線を落とす。指を絡ませたり擦ったりと落ち着きがない。ラーガンが指摘する通り、ウルフを問い質して彼本人から答えを得ることに物怖じしているのだ。

有耶無耶にしたい気持ちでいると不意に、紅茶から漂うミルクの優しい香りに嗅覚を撫でられ、面を上げる。
フリットの面差しを真正面に受けて、ラーガンは耳を傾ける姿勢を見せた。



フリットからの話を聞き終えて複雑な心境を抱えたまま、ラーガンは通路をブリーフィングルームに向かって進んでいた。
ウルフの居所に向かっているわけだが、どうにも自分の頭の中を整理整頓出来ず、額を片手で覆う始末だ。

フリットに大口を叩いてしまったし、兄貴分としての見栄もそれなりにあるため、引き下がるわけにはいかなかった。
アダムスが自分とミレースは席を外した方が良いのではないかと早々に申し出てくれたのは幸いだった。二人も途中まではフリットの話を聞いていたから、今頃は……。



居住区に向かって肩を並べている男女の空気は異質……でもなかった。

「ミレースは私よりもウルフとフリットの二人と話すこと多かったよな?」
「そうだと思うけれど、何か?」
「ラーガンから事前に聞いてはいたが、人の縁とは不思議なものだと思ってな」

感慨深げなアダムスにミレースも同意を示して頷く。
当時を思い返せば、ウルフもフリットも互いのことをパイロットの物差しで見定めていた。フリットは年齢も腕前も未熟な自分をウルフに自覚させられて対抗心を持っていたし、ウルフはフリットの才能を一目で見極めて将来を込みで同格と認めていた。二人の彼我に対する意識は客観的に見ても明らかだった。

「フリットも大人っぽくなりましたからね」

三年前、ウルフはフリットのことを最初は男の子だと思っていたという話だ。ファーデーンでのザラムとエウバのごたごたの一件を経てから女の子だと知って、ラーガンに確認を取り、自分の所にまで確認を取りに来たことをミレースは思い出す。些か、呆れた男だと感想したものだ。

勘違いしてしまうほど、フリットの外見も口振りも少年っぽかったのは否定しないけれど。
しかし、それも少し昔のことだ。口調だけはまだ男勝りなところがあるにしろ、流石に今のフリットを見て男と見間違うことはない。

「確かに、もしも街中ですれ違ったら気付かないくらいだ。ミレースは変わっていないから何処ですれ違っても気付けるだろうが」
「煽(おだ)てても何も出ませんよ」
「そんなつもりじゃないさ。他の奴らはどうしているかと思ってな」

ディーヴァで共に戦友を誓ったクルー達のことだ。それぞれと連絡を取ることに制限が設けられているため、音信不通に近い。まだ軍属であるとは思うが、コロニーの街中ですれ違うことがあれば、昔話の一つや二つはしたいものだ。

「私達もこうやって久し振りに顔を合わせることが出来ているんです。近いうちに会うことになるかもしれませんよ」
「そうだな、そう思っておく」

重々しくなりそうな自身をアダムスは吹っ切り、切っ掛けをくれたミレースへと感謝するように頷き返した。

「それはそうと、少尉の目にはどう映っていらっしゃるんですか?」
「あの二人か?まあ、別にいいと思うが」

当事者ではないし、外野からはそうとしか言えない。両想いなら面倒なこじらせ方をしないだろう。いや、こじらせていたからフリットの様子が思い詰めていたのだったか。
何はともあれ、自分は部外者だ。仲介役ならラーガンが一番適任である。だから席を外したのだ。

「ミレースはそう思わないのか?」
「口を出す気はありません。けど、フリットが不憫でならないというか」

相手があのウルフだ。振り回されないわけがない。
二人を見掛ける時も大概、フリットは困らされているか憤慨しているかのどちらかだ。ブレイクルームでの様子もウルフが原因だったのだから、心配にもなる。

いずれ、ウルフの大きな態度もフリットが原因と判ってミレースの悩みの種となるのだが、それは二十三年も先の話だ。

「意外と過保護だったんだな」
「そういうのとは違いますけど、ね。ブルーザー司令が、フリットに相手が出来たと知ったら驚かれたと思うんです」

はにかんだミレースに触発されてアダムスも苦笑する。
命を張って自分達を送り出してくれたブルーザーは勇敢な人だった。身寄りのないフリットの後見人を自ら申し出た彼が生きていたならば、きっと喜んでいただろう。もしくは、ウルフのことを認めてくれず、一波乱あったかもしれない。
アリンストン基地では、ブルーザーの補佐をしていたミレースは彼を通してフリットを見ていたからこそ、そう思う。



ミレースとアダムスが穏やかに会話を繋いでいるとは露知らず、ラーガンは冷や汗をだらだらと零していた。二人が何処まで勘づいてしまっているか気が気ではない。
しかし、まずは目先の問題だ。自分の請負った使命はウルフとフリットに話し合わせることだ。

『いいか、フリット。俺がウルフはこう思っているんじゃないかと言っても、それはウルフの言葉じゃない。だから、本人に訊かなくちゃ本当のところは判らない』

解決してやれないが、そのための手助けはしてやれる。そう見栄を張ってブレイクルームから出てきたラーガンは、通路の向こうから目当ての男が進んでくるのを視認した。
軽く手を挙げて立ち止まるように示せば、ウルフは目前で足を止め、後続している部下三人に先に行けと目で指示する。部下らの足音が消えかかると、ウルフは顎で用件をラーガンに問う。

「少しフリットと話してきて欲しいんですが」
「いいぜ。まだ、あそこにいるよな」

あっけらかんと、そのまま通り過ぎて行こうとしたウルフにラーガンは慌てる。

「いやいやいや、待ってください」
「何だ?他に何かあんのか?」
「そういうわけじゃないですけどね、人の話は最後まで聞くのが礼儀でしょう」

本人であるウルフを前にいきなり本題をフリットから口にするのは難しい。それを考慮して、ラーガンはまず先に自分が彼に説明するために此処まで来たのだ。
ウルフの左肩に手を掛けてラーガンは彼を引きとめる。

「だったら早く言え。こっちも忙しい」
「それは本当に申し訳ないんですが……。俺が言ったこと、まだ気にしているのかと思って」
「お前が言ったこと?」
「フリットを大事に出来る男は他にもいると言ったことです」

ウルフが眉目を歪ませて反応を示した。しかし、鼻を鳴らして一蹴される。

「そんなことか。あいつはもう俺のもんだって言ってるだろ」
「なら、俺の目を見て言ったらどうです」

無意識に逸らしていたことに気付かされたウルフは眉間の皺を濃くした。そのことにラーガンは深く溜息を吐く。技量に関してはウルフの方が自分より優秀だと認めているが、この男は自分より年下なのだ。

「責めているつもりはありません。貴方がフリットを大事にしてくれているのは判っていますから」

肩にあるラーガンの手をウルフはその一言を切っ掛けに振り払った。

「判ったような口を聞きくな」

唸るような低い声にラーガンは怯みそうになったが、ウルフは粋がっているだけだ。

「ウルフこそ、本当にフリットを判っているつもりですか」
「何が言いたい」
「大事にしすぎているんじゃないかってことです」

目を丸くしたウルフに意外な一言だったらしいと気付かされて、ラーガンの方も拍子抜けする。

「無自覚ですか?」
「いや……そんなわけじゃねーが。俺にだって色々ある」

色々あると不明瞭な言葉で途切られて、ラーガンはバイザーの奥を顰めさせた。そんな曖昧な理由をフリットに認めさせるつもりでいるのだろうか、この男は。

「一度だけで捨てるなんてことしたら、俺だってただじゃおきませんよ」
「そんなことは一言も言ってねぇだろ。見くびるな」
「なら、色々とは何ですか。具体的な説明をお願いします」
「……………破っちまったんだろーが」
「破った?」
「だから」

続いてウルフから説明された内容にラーガンは間抜け面を晒したが、生々しい内容に次第に顔を赤らめ、手でバイザーごと目元を覆う。
だいぶ気を付けていたが処女膜を傷つけてしまったと言うのだ。初めてだと慣れていなくて傷つきやすいものだが、上手くやれば出血しない。

「いいか、俺様は下手じゃない」

ひと差し指を突き付けられた。指を辿ってウルフの真顔を見遣ったラーガンはこの男の幼稚な部分を見てしまって現実逃避したくなった。

「身体の中を傷つけるのは大変なことですが、だからって」
「あいつの身体が出来てねぇってことだろうが。今は食って寝て育つべきだ」
「なら、それをフリットにも言ってあげてください」
「………色々あるって言ってるだろ」

ラーガンを一瞥してから、ウルフは腕を組んで壁に背を預ける。
フリットの身体が成長途中である理由も本心であり、自分が無理をさせてしまいそうだと言う気掛かりもある。しかし、それだけではない。お互い平行線であることは受け入れたが、自分は言い切れていないことがあった。親になれないことを。
それまで受け入れさせたら、予期せずともフリットの負担が辛いものになるのは避けられない。その後ろめたさを後回しにしようとしている。

「判りました。俺はそれで納得しておきます。けど、俺に言ったことと同じで構いませんから、フリットにもちゃんと説明してあげてください。それと、まぁ……スキンシップを少しお願いしたいんですが」
「スキンシップ?いつもしてるぞ」
「普通のではなく、そういうのを」

目を彷徨わせるラーガンにウルフは彼の言いたいことに勘づいて腕組みを解いた。まさかフリットがそこまでラーガンに相談していたとは。だが、それだけフリットが物寂しい思いをしていたのかと思えば思うほど、いじらしく感じてくる。
確かに、含みのある触り方は避けていた。普通に肩を叩いたり背中を押したりというのも比較的少なかったように思う。

「お前からお許しが出るなら遠慮しないぜ」
「二人きりで、お願いしますよ」
「了解だ。それと、俺も一つ頼む。時間掛かるだろうから、あいつらに言っておいてくれ」
「ええ、それは構いませんよ」

ウルフの部下であるササバル達に伝言くらいは容易い仕事だ。ラーガンは二つ返事で了承する。

先に行くラーガンの背中に、ウルフは自分も彼に用件があったことを思い出した。少し待てと背中を引き止め、顔を近づけて声を潜める。

「中佐に気を付けろ」

眉を片方跳ね上げたラーガンは直ぐさま視線を細める。ウルフを見遣れば、彼は声に出すなと口だけを無音で動かした。

嗅ぎ回ってるお前らのことをしつこく聞かれた。中佐って以前、ホテルの事件でフリットにも貴方にも良くしてくれたあのアレン中佐ですか?そうだ。何故。人は好いからな、弱味でも握られてんだろ。その辺は有り得ますね。忠告はしたからな。

読心術での会話を切り上げ、行けとウルフはラーガンの背を手の甲でノックするように押した。

「早く出世しろよ、ラーガン」
「競争しますか?」
「出来レースだろ」

軽口でラーガンを見送り、ウルフは前髪を掻き上げた。

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* Category : 小話
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